上達の指南
(3)ツケ切りから気合の応酬
(寄稿連載 2013/03/19読売新聞掲載) 林さんとの対戦成績を調べたところ、7勝22敗と無残なものでした。私は高目定石の後、中盤までは思い描いた形に近い碁を打てているのですが、そこからが下手なようです。リードを保たなければならない段階で、打ちすぎたりして、好局を棒に振ることがしばしばなのです。これは人間性の問題ですから、今さら何をいっても意味はないかもしれません。
【テーマ図】 白が高目からかけたのに対し、黒がつけ切って抵抗した形です。△とかけた局面。黒イのカカリなら常識的です。
【変化図1】 それなら、私は白1と下がるつもりでした。これは次に白Aのコスミツケに黒Bのヘコミがほぼ約束されていますから、黒Cには白Dとたたいてゆるみシチョウで取れています。白石の働きに無駄がありません。
【実戦図】 黒1の動き出しが最強でした。ここで白2と切りを入れたのがタイミングと思いました。
【変化図2】 黒1の棒ツギなら、白2の押さえを決めてから4とたたきます。黒5から白16までは一本道です。白も「まあまあ」かと思っていました。
実戦図に戻り、白2に黒3と反発してから21まで、気合の変化になりました。
白22のツケは疑問で、イの飛びが良かったようです。左辺で先手を取り、ロと開いて十分の形勢でした。
●メモ● 一昨年5月に亡くなった作家、団鬼六さんが孤高の棋士を描いた未完の小説「落日の譜 雁金準一物語」(筑摩書房)が出版された。雁金は1879年(明治12年)生まれ。本因坊の跡目と目されたこともあった。団さんと親交のあった高木九段が「その後の雁金準一」と題して解説を寄せている。
第41期十段戦 予選
白 九段 高木祥一
黒 九段 林海峰