上達の指南
(1)あくまで押し切る簡明策
(寄稿連載 2013/04/02読売新聞掲載) 囲碁は絶対の正解がないゲームですが、かといって「これも正解、あれも正解」という教え方では、教わる側が「ではどう打てばいいの」と戸惑ってしまうでしょう。
私はあえて「これがいいです」と断言するようにしています。その実例を紹介します。
【テーマ図】 5子局。白1から7のあと、私は黒8の飛びを推奨しています。以下、その理由を説明しましょう。
【1図】 黒1と掛ければ△を制することはできますが、白2に黒3と空き三角を強いられるのがつらい。
のちに白Aからハネツギも利かされるので、明らかに黒が割を食いました。
【2図】 黒1とこちらへ掛けるのは素晴らしい手ですが、白2、4の出切りを覚悟しておかなければなりません。
黒AやBからの戦いに不安がなければ問題ないのですが、やはり「心配だ」と言う人は多いでしょう。
【3図】 白1ならば黒2から4、6と、どこまでも押しきってしまう。通常は四線を伸びさせてはいけない、とされていますが、5子局ならばむしろ手厚くて簡明なのです。
この図を説明する時、私はいつも「白は一手ごとに3万円増えていますが、黒は5子も置いて大金持ちなのですから、喜んで3万円くらいあげてしまいましょう。これで攻められる恐怖がなくなるのですから」とお話ししています。
●メモ● 武田初段は三重県四日市市出身で、今も同市在住。39歳。県内各地で囲碁の普及と指導を行っている。親しみやすい人柄とユーモアを交えた巧みな話術にひかれるファンも多い。今回の講座のスタートにあたって、「いつも教室で話していることをそのままお伝えできれば」と話している。