上達の指南

武田祥典初段の「有段への特効薬」

(2)ヤキモチは攻められる元

(寄稿連載 2013/04/09読売新聞掲載)

 三連星に対してどう臨むのか、カカリにはどう対応するのか――。論理的に理解することで、実戦に応用が利くことはもちろん、序盤力も向上することでしょう。

 【テーマ図】 黒1の三連星に白2と内側からかかるのは「ヤキモチ」というもの。このことを知識としてご存じの方は多いでしょう。しかし「ではなぜ白2が悪いのか」と問われた時、きちんと答えられるでしょうか。

 【1図】 白1と外側からかかるのが正しい態度で、黒2に白3と上辺に展開。「あなたは右辺、私は上辺」の精神です。

 【2図】 内側からかかるのは、黒1のコスミツケで根拠を奪われ、白2に黒3と攻め立てられてしまいます。白4と詰めてもまだ治まり形を得たわけではなく、今後も攻めを見られるのが難点で、明らかに白がまずい。
 確かに白は、右辺の黒の構えを荒らすことはできました。しかしその代わりに、黒の構えが上辺へ「引っ越し」している点を見逃してはなりません。つまり黒の勢力は、少しも減ってはいないのです。
 1図では上辺が白の勢力だったのに対し、2図は上辺が黒の勢力になっています。しかも白は右辺で弱い石を抱えてしまいました。
 「自分は地を囲いたいが、相手には囲わせたくない」では無理が生じるのは必然。自分が囲いたいのなら、相手にも囲わせる気持ちが肝要なのです。

●メモ● 武田初段は名記録係として定評がある。今期棋聖戦七番勝負でも富山市で行われた第3局で記録係を務め、1日目の打ち掛けの後、記録用紙を入念にチェック。消費時間の誤差を見つけ、修正した。若手棋士が「記録係の相方が武田さんだと本当に安心です」と言うように、信頼は絶大。

【テーマ図】
【1図】
【2図】