上達の指南

武田祥典初段の「有段への特効薬」

(4)コウと上手に付き合おう

(寄稿連載 2013/04/23読売新聞掲載)

 コウと聞いただけで顔をしかめる方は多いのですが、碁にコウが存在する以上、避けて通ることはできません。嫌っているうちは煩わしいものでしょうが、うまく付き合えばコウほど頼もしい味方はいません。

 【テーマ図】 白1、3のハネカケツギへの応手を問います。

 【1図】 黒1のカケツギは完全にコウ恐怖症。敵前逃亡と言ってもいいでしょう。この手だけは打ってはいけません。

 【2図】 黒1と当て、白2に黒3とコウを取る一手です。
 黒3でAとつぐ人がいますが、これも敵前逃亡。まずは1回取ることです。このあと取り返されても元の形に戻るだけ。そこで考えればいいのです。
 白4のコウ立てに対し、黒には二つの道があります。

 【3図】 一つめは、黒1の解消。これはかなりの戦果で、白2の連打を許しても黒3から5、7として、全局的なバランスはとれています。「コウの部分で得をして他の部分は譲る」という考え方です。

 【4図】 二つめは、黒1の受け。白2には黒3と上辺にコウ立てを打ちます。白4と解消されますが、黒5と連打できれば、これまた全局的なバランスはとれています。「コウには負けても他の場所に二手打って得をする」という考え方です。
 コウ争いで重要なのは「コウの部分だけではなく、全局を見て考えること」なのです。
(おわり)

●メモ● コウ争いにおいて級位者が陥りがちなのが、「コウの部分だけでなんとかしようとする考え方」だと武田初段は言う。「だからコウになりそうなだけで敵前逃亡する人が多い」のだとも……。コウに負けたとしても「他を連打できれば全局的な損にはならない」との考え方が大切だという。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】