上達の指南

武宮正樹九段の「踊る囲碁」

(3)ふわっと圧力 攻め方に幅

(寄稿連載 2015/02/17読売新聞掲載)

 アルゼンチンタンゴは女性と組んで踊るのですが、組んだ瞬間にその人が上手かどうかがわかります。下手な人は力が入っていますが、上手な人はいい具合に力が抜けているからです。
 男性の側も、強引な力ずくのリードは相手に不快感を与えるだけ。柔らかくしっかり伝えるのが心地よいリードです。
 囲碁も、強い手やいっぱいに頑張った手ばかりだとくたびれてしまいますし、結果もよくないことが多いですね。

 【1図】 白1から3と打ち込んできた場面です。黒は3の石を攻めたいところ。どのように石を運ぶのがよいでしょうか。

 【2図】 黒1のように強引につけていくと、白6まで右下隅の黒2子が傷んで失敗です。

 【3図】 黒1も同様。やはり自分の石が弱くなります。

 【4図】 黒1から3とはねるのが基本的な石の動きです。白4は働きの悪いアキ三角。白の形を崩して黒好調です。ただし、黒5は強引すぎ。白6まで黒の方が心配な形です。

 【5図】 強い手ばかりが攻めではありません。黒1と遠巻きににらむのが好手。白2なら黒3と攻めを続行し、下辺の白を閉じ込めることができます。

 【6図】 黒1に白2と逃げてきたら方向転換して黒3と右辺の白を制することができます。相手につけていくような強引な打ち方だけでなく、黒1のようにふわっと圧力をかける手を覚えると、攻めの幅が広がります。

●メモ● 武宮九段は毎日3時間のダンスレッスンをほとんど欠かさないという。5年前から始めたアルゼンチンタンゴは、それまで習っていた社交ダンスとは「全く違う」と熱く語る。「タンゴはパートナーと至近距離なので、呼吸を感じながら踊る魂のダンスです」

【1図】
【2図】
【3図】
【4図】
【5図】
【6図】