上達の指南

武宮正樹九段の「踊る囲碁」

(4)柔軟かつ軽やかな発想を

(寄稿連載 2015/02/24読売新聞掲載)

 ダンスは、パートナーと呼吸を合わせなければなりません。ですから、相手を思いやる気持ちが芽生えます。囲碁でも、「石を取りたい。地も厚みも欲しい」と自分の幸せばかり考えているとよい結果になりません。どちらも自分だけの世界に入ってはうまくいかないのですね。
 言い換えると、思いを込め過ぎるのはよくない、ということ。動きが重くなり、よくない結果につながることが多いからです。囲碁の場合、特に相手の勢力圏では柔軟で軽やかな発想が大切になってきます。

 【1図】 白1のカカリに黒2ときたら白3のハネが形です。

 【2図】 続いて白1のツギから白3またはAと開くのが効率のよい動き方になります。

 【3図】 では、▲がある黒の勢力圏では、黒4以降、白はどのように打てばよいでしょう。

 【4図】 白1は、この場合は重い手。黒2のとき、▲があるため白は開きを打てず、逃げまどうことになってしまいます。

 【5図】 白1が、柔軟な一手です。黒2と切られるのが心配かもしれませんが、△や□はもう十分に働いた石なので、捨てても惜しくないのです。

 【6図】 白1から5までとなれば、黒地を破った上に、▲が傷む結果となり、白大成功。白石が効率よく働いていることがわかります。
 ダンスと囲碁の共通点は、その人らしさ、感性が出るところです。囲碁もダンスも自信を持って楽しみましょう。
(おわり)

●メモ● 武宮九段は昨年、日本棋院創立90周年記念式典でもダンスを披露した。今年の5月は、初めてアルゼンチンタンゴのアジア選手権に出場する予定だという。「100組近くが出場する大きな大会。1日目の予選を抜けて2日目の本戦に入るのが目標です」

【1図】
【2図】
【3図】
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【5図】
【6図】