上達の指南
(1)弱い石を作らず攻め続行
(寄稿連載 2007/08/20読売新聞掲載) 2004年から2年間、大阪・北浜の関西棋院囲碁サロン担当理事を務めました。アマチュアのみなさんと接する機会を多く持ち、有段者さらに高段者へと上達していく上でどんなところを直せばよいのか、アドバイスのポイントをほぼつかめたと思います。
そのひとつが、打ち込みです。どんなタイミングで、どこへ打てば、対局の流れを引き寄せることができるか。指導碁などでよく現れる場面を題材に取って、解説させていただきます。
【テーマ図】 5子局。上手は白1、3とかかりっぱなしで、5と割り打ちました。黒としては、右辺に打ち込んで白を割いていきたい局面。どこに目を付けますか。
【変化図1】 黒1と、厳しく一間に挟んでいきたい。白2とつけて、さばいてくることが予想されます。黒7のつぎの後、白8と渡れば、10まで頭を出せますが、そこで黒11とのぞき、13と二間に開いておきます。白は右上の一団がまだ完全に2眼を確保していないし、右下の1子も孤立しています。黒は弱い石が無く、この後も攻めを続行できます。打ち込み成功。主導権を握りました。
【変化図2】 前図の黒7の後、白8と切り、隅で治まる変化もあります。黒は9、11と3子にして捨てます。格言で「2子にして捨てよ」と言いますが、この場面は、3子捨てる方が、周りから締め付けが利くし、白地も少ないのです。黒15まで右辺の白を孤立させ、黒十分の進行。
【失敗図】 指導碁では、黒1と打つ人が多いのです。堂々とした手に見えるかも知れませんが、白2の滑りから4と、狭いながらも治まられてみると、白を割いて攻めていく雰囲気ではなく、黒1が何となくぼやけた手になってしまいます。悪手とまでは言いませんが、追及不足です。
●メモ● 滝口九段は関西棋院所属。香川県出身で44歳。10歳で地元の囲碁教室に通いだし、14歳で院生、18歳で初段になった。師匠は、東野弘昭九段。3年前、大手合制度の下では最後となる九段への昇段を果たした。