上達の指南

滝口政季九段の「打ち込んでみよう」

(3)相手をかわし軽く荒らす

(寄稿連載 2007/09/03読売新聞掲載)

 相手の模様に打ち込んでいく時、一番まずいのは、重い石を作って攻め立てられることです。相手が多く手をかけてある場所では、ある程度、地を作られて当然なのです。そこで今回は、軽く打つということについて、互先の典型的場面で考えてみましょう。

 【テーマ図】お互いにふた隅ずつ締まり、大場を占め合う進行です。白は14まで、左下の小目から締まり、下辺と左辺の星も占めました。この場合、黒15が消しのポイントで、黒17のつけから19と、切り違えるのがさばきの手段です。黒23の当たりを利かせ、白が24とポン抜いた局面で、黒の次の1手が、軽く荒らせるかどうかの分かれ目です。どこへ打ちますか。

 【変化図】黒1が正解。白が2、4と黒1子を抜いてきても、黒3、5と外側から応じて、何ともありません。この後、白Aなら、黒Bと応じて白を凝り形に導きます。白C、黒Dの当たりに、白が4の下をついだ時、がっちり黒Eとつぎます。白にカス石を次々と取らせ、ひどく効率が悪い形にしました。白の勢力圏だったところで、黒の厚みができました。こうなっては白最悪。つまり黒1の後、白からすぐ強引に仕掛けていく手はないのです。

 【失敗図】黒1と、2か所の断点を一度にカバーして安心? そうはいきません。白2ののぞきに黒3はやむをえず、さらに白4と圧迫されては、これこそが重い石。当分は攻めの標的にされ、左辺の白地がふくらみそうです。

 【参考図】白1と応じてきた場合の打ち方も、示しておきます。黒2、4に続いて6のケイマがいい手。白Aには黒Bと押さえ、以下、記号順に黒3子を捨て、黒Jと帽子します。やはり白は凝り形で、地も大したことはない。黒が軽く荒らし、打ちやすい局面です。

●メモ● 滝口九段は、関西棋院の理事に就任して今年で4年目。最初の2年間は、囲碁サロンでアマチュアを指導。現在は総務担当として、囲碁ファンの減少など、難しい環境下で改革が迫られる棋院の運営全般に気を配る。

【テーマ図】
【変化図】
【失敗図】
【参考図】