上達の指南
(2)手筋一発で主導権確保
(寄稿連載 2007/08/27読売新聞掲載) 打ち込みから始まる競り合いは、しばしば難しい変化をたどります。つぶれるのが怖くなって妥協をしてしまい、何のため打ち込んだのかわからない結果を招いたことはありませんか。自信を持って打つには、典型的な局面での戦い方を勉強しておくことが大切です。
【テーマ図】5子局。白13まで穏やかに進みました。右辺で三間に開いている白に対して、黒14と打ち込んだのはいいタイミングです。白15の下つけから21まで進んだ局面で、黒22と切断したのも、断固こう打つべきです。白が27まで右上隅を占めた時、黒は右辺をどうしますか。安易な妥協をせず、手筋を決めて主導権を握って下さい。
【変化図1】少し読みを入れれば、黒1とつける手筋を発見できるはずです。白2と遮ってこられるのがこわいという人は、白も大きな弱点を抱えていることを見逃しています。黒3と切断し、厳しく攻めていけばいいのです。白が4の当たりを利かせ、6と動き出しても、黒7のつけで逃げられません。13まで進んでは、碁は終わりですね。
【変化図2】前図の展開では白があまりにひど過ぎるので、白2と飛んでおくくらいでしょう。それを見て黒3と渡ります。白は整形が難しいですが、仮に4と飛んでくれば、黒は右上黒5の押さえを利かし、7と開いて、根拠を持っておきます。黒は弱い石がなく、地も少しはあって、満足できる進行です。
【失敗図】自分の石ばかりが弱く見え、つぶれたくないからと、黒1、3と2線をはうようでは、相手の思うつぼです。右上の黒の4子も不安になってきました。
打ち込んで相手を攻めていこうという、当初の狙いはどこへ行ったのか。この手を思い浮かべた人は、こんな弱気は絶対だめと肝に銘じて下さい。
●メモ● 滝口九段は小学5、6年生の時、地元香川県で背泳の小学チャンピオンだった。水泳を続けるか、囲碁の道に進むか悩んだというスポーツマン。最近ではゴルフが好きで、月1、2回程度、楽しんでいる。