上達の指南
(4)堂々と入り大きく荒らす
(寄稿連載 2007/09/10読売新聞掲載) 相手の模様が大きくなってくると、気になりますね。アマチュアのみなさんの碁を見ていると、時期尚早の打ち込みを敢行したり、打ち込む場所を誤ったりして、形勢を損じてしまうことが少なくありません。
【テーマ図】お互いにふた隅ずつ占め、オーソドックスな進行です。左上で、黒13のかかりに、白が14と挟んだので、黒は三々に入って、隅で治まりを図りました。定石の通り、白20までとなったところで、上辺の白模様が大きくなってきました。ここで、黒が右下を締まるような手は甘く、白10のところから1間に飛ばれると、模様が深く大きくなります。模様完成を目前にした今が打ち込みのタイミング。どこへ入りますか。
【変化図】堂々と黒1まで入ります。白は2とつけてくるくらい。黒9のぶつかりまでを打ち、黒11と挟みつけるのが肝要です。白12で13と下がる手は、黒12と切られて無理です。従って黒は13と渡ることができ、右上から上辺にかけて確定地を得ます。白は先手を得て、この後、外勢を活用する展開を目指します。黒11で13と打つのは腰砕け。白11、黒A、白Bと割かれ、失敗は明らかでしょう。
【失敗図】級位者の碁では黒1と打つケースが、意外と多いのです。正解と一路ずれているだけですが、結果は大変な違い。白は、2のつけで渡ってしまいます。途中、黒7で8と出る手は、白に7と切られ、いけません。白12までの進行が予想されますが、白を固めてしまった上、右上隅にまで食い込まれています。このような読み不足で腰が引けた手をなくすことが、上達の道です。
【参考図】変化図の黒3で1と割り込むのは、Aと抱えるシチョウがいい場合のみ有力です。この場合は△がシチョウアタリで、成立しません。
(おわり)
●メモ● 滝口九段の昨年の成績は、理事で多忙だったこともあり、4勝6敗だった。今年はここまでで、対局数、勝ち星とも昨年を上回る。「理事の仕事を言い訳にせず、賞金ランクを上げて、NHK杯に出場したい」