上達の指南

寺山怜四段の「当たりの方向」

(4)引きつけて決め手を放つ

(寄稿連載 2014/10/21読売新聞掲載)

 今期の棋聖戦リーグ、羽根直樹九段と一力遼七段の一戦から題材をとりました。実戦のままだと難解な要素を含んでいるため、中央の形を少しアレンジしてあります。

 【テーマ図】 黒1のツケはサバキの手で、横目で△をにらんでいます。白が2の引きから4と切ってきたら、黒はどうするかという問題です。実戦は白2でイとはねましたが、両対局者の読みはこれから解説する流れも含んでのことです。

 【1図】 黒1の当てから3と押し、黒5、7で取れれば問題なし。しかし白8と曲がられると、この頭を止めることができません。黒の苦戦は明白です。

 【2図】 黒1と当てて3と押し、次に黒4の当たりを見るのは一つの筋です。しかしこの場合は白4と中央を伸びられてしまいます。黒5とたたいて9まで、一応の形を得ることはできましたが、まだ全体が完全には治まっていない点が不満です。

 【3図】 まずは黒1とこちらから当て、さらに3と押すのが正解です。白4と伸びられ、右辺の黒を苦しくしているように映るかもしれませんが――。

 【4図】 ここで黒1の当てから3と出ていく調子があるのです。白4に黒5と出ると、Aの押さえとBのシチョウが見合い。黒の大成功です。
 狙っている石の逆側から当て、引きつけておいてから決め手を放つ。これが正しい当たりの方向なのです。
(おわり)

●メモ● 寺山四段は10月初旬に行われた国際新鋭対抗戦に、日本代表として出場した。8人で編成した日本チームは1勝2敗で3位に終わったが、寺山四段は中華台北と韓国から勝利を挙げ、2勝1敗と健闘。「粘り強く打てて結果も出せたので、まずまず満足」

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】