上達の指南

鶴山淳志七段の知っていると便利な手筋

(1)見逃しがちな形の急所

(寄稿連載 2017/06/27読売新聞掲載)

 上達のために、手筋はぜひ覚えたいテクニックです。決まると気持ちがいいものですし、手筋に明るいと形の急所がわかってきます。いろいろな局面で役に立ちます。今回は、知っておくと便利な手筋をご紹介しようと思います。
 今週は、実戦で見逃してしまいそうな、石を取る手筋です。

 【第1問】黒番で手筋を放ってください。成功すると、白の3子を取れます。
 【1図】黒1と当てるのは策のない手。黒3にも白4まで、チャンスを逃して失敗です。
 【2図】黒1と1線にノゾくのが、形の急所です。白2とつげないのがみそ。黒3で攻め合いは黒の勝ちになるためです。
 【3図】白2と受けることになり、黒3と白3子を取れます。白2でAなら黒Bで追い落としです。

 【第2問】黒番です。下辺の黒2子が取られているように見えますが、助け出す手筋があります。第1問を解けた方は、形の急所がすぐにわかるかもしれません。
 【4図】単純に黒1、3と打っても、白4までと、黒が取られてしまいます。
 【5図】黒1が正解。第1問と同様、1線にノゾいた場所が急所です。白2とつげば、黒3で白6子を取れます。白A、黒B、白Cと1子を抜かれても、黒Dで、白を仕留めています。
 【6図】黒1に白2と抵抗してきたら、黒3の当てから黒5が好手。白Aなら黒Bですし、白Bなら黒Cで白はシチョウです。

●メモ● 鶴山七段は熊本県出身の35歳。棋聖戦では昨期にBリーグから惜しくも降格し、今期はCリーグで巻き返しを図っている。読みが鋭く戦う棋風で、手筋については「相手にやられる側。どちらかと言えば僕は筋が悪い」と笑う。「でも、自分の体験を基に、ある意味手筋には詳しいです」

【第1問】
【1図】
【2図】
【3図】
【第2問】
【4図】
【5図】
【6図】