上達の指南

王銘エン九段の「弱い石の接点が急所」

(2)競り合いは一歩でも先に

(寄稿連載 2010/06/08読売新聞掲載)

 中盤で、互いに弱い石が競り合っているときは、その接点が最優先の急場です。一歩でも先に行き、力関係を優位にしましょう。接点を占めることで、自分が強くなり、相手が弱い状況を作り出すのが、競り合いで負けないコツなのです。

 【テーマ図】 上辺から▲と△が飛び合っていますが、双方ともまだ強い石ではありません。攻められては困る石同士が向かい合っていますから、その接点を先に占めれば、将来の戦いで優位に立てるのです。
 白1のケイマが逃せぬポイントでした。黒2の受けは仕方ありません。白3に開いて、左下からの白模様を広げます。さらに白5と中央に進出する手が、黒の薄みをにらんでいます。白イのツケ越しが強烈です。

 【1図】 白1と隅を守るのも大きな手ですが、今度は黒2と接点を占められます。中央の白は強くありませんから、白3と受ける手が必要です。黒4と広げて、右辺の黒模様のスケールが大きくなりました。黒2の地点をどちらが占めるかで、広さ比べが大違いなのです。

 【2図】 中央の弱い石の接点を無視して、白1と下辺を急ぐのは、黒2と肝心な接点を占められて、流れが悪くなります。黒2はイの一間より踏み込んでいます。白は中の石を放っておけませんから、白3の受けが必要です。ついで、黒4と下辺に飛び込む手が、白1の石を挟んで絶好です。

●メモ● 王九段は、若いころからスポーツ好きで、棋院では棋士仲間とよく卓球を楽しんでいた。野球も得意で、棋士チームのほか、囲碁関係者とあちこち試合に出かけていた。タイトルを取って忙しくなり、遊べる時間は減ったが、気持ちは今も活動的。明るく健康的な魅力で、人気者である。

【テーマ図】
【1図】
【2図】