上達の指南

王銘エン九段の「弱い石の接点が急所」

(3)反撃の余地を残さない

(寄稿連載 2010/06/15読売新聞掲載)

 弱い石の接点があるときは、後のことを考え過ぎないで、まず接点に先着することが肝心です。ともかく、先に相手の首根っこを押さえ込む、そんなイメージです。打ちたいところはたくさんありますが、弱い石の接点を占めることを最優先にしてください。

 【テーマ図】 上辺で、攻められては困る石同士が向かい合っています。その接点を占める黒1のケイマが絶好のポイントです。白2の飛びに黒3とあおって、あくまで接点のラインは譲りません。
 白4には黒5と受けて右辺を大事にします。白はまだ弱いですから、攻められないように白6のケイマで補強する必要があります。そこで、黒7と左辺の急所を占めて、黒が立派な形になりました。

 【1図】 接点を占めるときに注意してほしいのは、反撃の余地を残さないことです。黒1の大ゲイマはちょっと薄い。白2のコスミに黒3の受けは仕方ありませんから、白4から6と分断されるのが怖い。白8と伸びられて、かなり危険です。黒1は頑張り過ぎました。

 【2図】 黒1は右辺の模様を広げて大きいのですが、白2の大ゲイマが絶好点で、左上の黒が急に心細くなります。黒3のハネから5のケイマなら、白6と急所に迫られて、一気に攻勢に出られるでしょう。攻守逆転の印象です。

 自分だけ弱い石を作ると、碁が一方的になりますから注意しましょう。

●メモ● 王九段は勉強熱心で、小林覚、片岡聡、王立誠九段の同世代で集まる研究会を長く続けている。最近は若手と一緒に寄せの研究会も開いていて、メンバーはみんな成績がいいと評判である。「確実に数字が出る分野だけに身につく」とのこと。48歳にして、まだまだトップを狙っている。

【テーマ図】
【1図】
【2図】