上達の指南
(1)攻めるか囲うかの判断
(寄稿連載 2016/06/28読売新聞掲載) 囲碁は初心者から高段者まで、誰もが上達を望んでいるものですが、なかなか思うようにはいきません。とくに初めのころは、囲碁の全体像がつかめなくて悩むことも多いでしょう。
囲碁教室などでアマチュアの方と接していると、伸び悩んでいた方が急に飛躍する場面に出会うことがあります。自分なりに壁を乗り越えようとしているのを見ると感激します。
そんな場面をご紹介します。上達のヒントにしていただければ幸いです。
【テーマ図】 まずは20級くらい同士の対局です。黒が右辺から中央にかけて大模様を築いています。黒1と天元を占めて立体的になりました。そこで白2と模様を消しに来た場面です。黒はどういう考え方をするのが適切でしょうか。
【1図】 実戦は黒1と内側からつけて行きました。右辺の模様を囲って地にしようとしています。これが正しい判断でした。白2のブツカリから4とはねたのはやり過ぎです。黒5と切られて白が苦しい形になりました。黒9の曲げは立派な一手で、圧倒的に優勢になりました。
【2図】 黒1につけられれば、白2とはねるくらいです。黒3の引きに白4とかけつぎ、黒5、7のハネ伸びとなれば、双方、立派な姿です。
【3図】 黒1と外からつけるのは、模様を生かして攻めようという意図ですが、白2のハネから4とかけつがれると、これ以上の攻めは効きません。
●メモ● 王五段は台湾出身。1977年4月生まれ。97年入段、2011年五段。98年、「囲碁ばかりではなく、視野を広げたい」と桜美林大学に入学、修士課程まで計6年間学んだ。修士論文のテーマは「情報化社会と囲碁の多様性」。現代社会における囲碁の役割と効能を論じた。