上達の指南
(2)勇気をもって挑戦する心
(寄稿連載 2016/07/05読売新聞掲載) 10級くらい同士の対局です。守るタイプの人は、石が激しく接触してひどい目にあうと、萎縮してしまう傾向があります。そこを乗り越えて、思い切った手が打てるようになれば一気に飛躍します。
【テーマ図】 黒は守りは上手なのですが、積極性が少し足りなくて、飛躍のチャンスをつかめずにいました。しかしこの碁は、そんな自分を変えようとしているのです。ふだんなら怖がって打てない手でも、勇気をもって冒険しています。この挑戦する気持ちが大切なのです。
黒1のツケは今まででも打てたと思いますが、黒3のハネには驚きました。断点があっても怖がらない積極的な戦略です。この一手に感動でした。
【1図】 以前でしたなら、黒1のツケの後は3と引いて守っていたかもしれません。これでは白4と飛ばれて、中央の黒模様が小さくなってしまいます。
【2図】 テーマ図の続きです。白1の伸びに黒2の当て込みを決めてから、黒4と上辺を広げたのが実戦です。これもいいのですが、中央がまだ薄いので黒4ではAとこすんで、白の出口を止めておくのが最善でした。ここまで打てれば完璧です。ともあれ、思い切った手を打ち始めたのがうれしい。
守る棋風の人は、つい安全な手を選びがちですが、結果を恐れずに思い切った手を打ち、少しずつ積極性を身につけるようにしましょう。
●メモ● 王五段の携わっている囲碁教室は、「吉原由香里・王唯任・万波佳奈の囲碁教室」。その名の通り、吉原六段、万波四段と一緒にスタートさせた。初めは生徒3人で、ビラ配りをしても効果がなく苦労した。今では口コミで参加者が増え、入門から有段者までクラス別でにぎわっている。