上達の指南

人工知能(AI)の碁(上)「Zen」の「引退」

世界的強豪の朴を圧倒(上)

(寄稿連載 2018/04/18読売新聞掲載)

 日本発の囲碁AI(人工知能)「DeepZenGo」(Zen)のプロジェクト終了を記念し、3~4月、「囲碁電王戦FINAL」(ドワンゴ主催)が行われた。この「引退碁」シリーズで、Zenはどんな碁を打ったのか。金秀俊八段に解説してもらった。(編集委員 田中聡)

 Zenは、中国の?昱廷九段、韓国の朴廷桓九段、日本の趙治勲名誉名人と対局した。昨年、一昨年、Zenを破った棋士たちだ。「リベンジマッチ」でもあった「引退碁」シリーズはZenの2勝1敗だった。

 今回取り上げるのは、朴九段を破った一局。「テーマ図」は序盤、黒模様を消すために、朴九段が白1と左辺に臨んだところだ。

 「黒イと受けると、白ロ、黒ハから順に黒ト、白チまで上辺から中央にかけて巨大な白模様を作られる。それではまずいので黒2と反発しました。この後の打ち方がポイント」と金八段。

 「結論から言うと白は『参考図1』の1と上部から圧迫して黒を攻めるべきでした」

 白1に対して、黒がイと上辺を抑え込むのは、白ロ、黒ハの後、白ニ~ヘと頭を抑えられて黒が良くない。従って黒2と開く感じだが、「白3と打って、攻めが続きそう」という。

 実戦で朴九段の選んだ手は、「実戦の進行1」の白1。2、4とサバキを図る黒に対し、白は3から上辺と左辺を分断していったが、「黒12が決め手でした」と金八段はいう。白が素直に応戦すると「参考図2」。「白9まで上辺を制することはできますが、黒10と飛ばれ、左辺がそれ以上に大きい」

 朴九段は「実戦の進行2」の白1と打った。「続く黒2も好手」と金八段。「白は4と突き抜きたいのですが、黒イが厳しい。ロと押さえてもハと切られ、白ニには黒ホの二段バネが成立します。白3の守りは仕方がありません」

 以下の進行をみると、13の愚形を余儀なくされた白に対し、黒は16まで左辺を地にした。白は17の切りに期待したが、黒20が絵に描いたようなサバキの筋。

 「朴九段は現在、世界ナンバー1ともいわれる強豪。読みが確かで、めったなことでは崩れない。その朴さんを圧倒したのはお見事です」。金八段は讃えた。

●メモ● 囲碁AIで世界最強は、グーグル社傘下のディープマインド社が開発した「アルファ碁」。中国発のAI「絶芸」が2番手で、「Zen」はこれらに続く実力があるといわれている。「筋が良く、バランスが取れた棋風。ただ、寄せや攻め合いに弱点がありますね」と金八段。

 黒 Zen
 白 朴九段

【テーマ図】
【参考図1】
【実戦の進行1】
【参考図2】
【実戦の進行2】