上達の指南

山田規喜の「攻防の急所」

(1)眼形与えない工夫必要

(寄稿連載 2006/10/16読売新聞掲載)

 最近、ネット碁にはまっていて、時間があればなるべく打つようにしています。完敗した時なんかは「いったい相手はだれだったんだろう?」とすごく気になったりしますけどね。以前は実戦不足になると、関西棋院の研究会で対局したものですが、勉強の機会がどんどん増え、そんな悩みは解消されました。
 今日から4回にわたり、「攻防の急所」というテーマでお話しさせていただきます。対象は初段を目指すクラスで、題材はすべてネット碁のアマの対局から採りました。上達の一助になれば幸いです。

 【テーマ図】 左辺、△とハサミツケられたところです。白も黒もまだ眼形がなく、ここの戦いが勝敗に直結するという局面です。

 【失敗図1】 実戦ですが、黒1とつぎ、白2に黒3とフクレたのはいけません。白4と当てられて、黒の形が崩れました。黒5から9まで、黒は無残なダンゴにされ、すでに負けになっています。

 こういう接近戦では、もう少し空間を作り、相手にも眼形を与えない工夫が必要になります。

 【失敗図2】 黒1と逃げるだけでは弱気すぎます。白2、4と黒1子を切り取られては、一方的に攻められるだけです。打っていても楽しくないでしょう。

 【失敗図3】 黒1のツギから3もうまくいきません。黒9と逃げてまだ負けとはいえませんが、白を攻める狙いは遠くなりました。

 【正解図】 黒1のツキアタリが急所です。白2にだまって黒3とついでいます。こうなると、AとBが見合いで黒に眼形の不安はありません。白を攻める楽しみは黒のものです。攻防の急所を見極めましょう。

●メモ● 山田九段の名前は「のりよし」と読む。34歳。関西棋院所属で、本田邦久九段門下。1987年入段、2003年九段。今年9月末までの成績は13勝6敗。関西棋院四賞の特別賞、永井賞を受賞。

【テーマ図】
【失敗図1】
【失敗図2】
【失敗図3】
【正解図】