上達の指南

山田規喜の「攻防の急所」

(4)適切な判断、有段への道

(寄稿連載 2006/11/06読売新聞掲載)

 級位者のうちは、相手の模様と地は大きく、自分の方は小さく見え勝ちなものです。そこで無理な深入りをし、一方的に攻め立てられ、形勢を損じてしまいます。だからと言って、相手に迫らなければ、何もしないであっさり負けるでしょう。
 これらは形勢判断がしっかりできていないのが原因で、適切な判断ができるようになれば、もう立派な有段者です。最終回は、消しとその受け方をテーマにしました。

 【テーマ図】 どちらも大模様を張って対抗しています。いま、△とボウシで消しにきました。なかなかバランスの取れた着点ですね。ここからが実力が問われる局面です。

 【失敗図1】 黒1の突き当たりは、隅の地を重視した堅い手です。白2の引きに黒3、5とはね伸びて隅は確定しましたが、白は6と大ゲイマにゆったり構えて十分の形です。黒は左方の大きいところを制限されています。地にこだわって消極的でした。

 【失敗図2】 黒1、3のツケノビで右方を全部地にしようとする人もよく見かけます。白4と突き当たり、6とはねます。黒7のコスミツケから9と渡りますが、白10とケイマされてみると、黒は断点が多くて味が悪く、さっぱりの結果でしょう。
 黒7を8と切るのは、白Aの当てから黒B、白C、黒D、白10と打たれて、隅の白地が大きすぎます。

 【正解図】 黒1は「ボウシにケイマ」の格言通りです。白2に黒3と詰めて根拠を奪い、白4と構えたとき、黒5のナラビが隅を固めながら白を攻める急所です。白6まで相場の進行と言えるでしょう。白6をAは、背中の方から反撃されて少し怖いかもしれません。黒1をBは地を確保しようとしてやや消極的なので、準正解とします。
(おわり)

●メモ● 山田九段は7、8年前から数日に1回、自宅に近い兵庫県明石市のスポーツジムに通っている。1時間ぐらい走ったり、歩いたりしてから、筋トレというメニューをこなす。

【テーマ図】
【失敗図1】
【失敗図2】
【正解図】