上達の指南
(2)急所になりやすい弱い石
(寄稿連載 2016/05/10読売新聞掲載) 三つのテーマを確認しておきましょう。〈1〉自分の弱い石〈2〉相手の弱い石〈3〉地の大小――です。参考までに〈1〉と〈2〉を含んだ手と、〈1〉と〈3〉を含んだ手がある場合は、〈1〉と〈2〉の方が価値が高くなります。弱い石は急所になりやすいということです。
今回は互い先の碁の分かりやすい局面を題材としていますが、これは2子、3子、さらには9子の置き碁にも同じように通用することです。
【テーマ図】 黒番です。どこへ向かうのが正しいでしょう。直感も大切ですが、対局者となったことを想定し、三つのテーマに沿って考えてみましょう。
【正解図】 黒1のスベリが急所でした。石を置いてみると、この一手という感じがするでしょう。
局面を見渡すと、▲2子は最も安定感のない石で、〈1〉のテーマに該当します。黒1によって△2子が弱くなるため、これは〈2〉のテーマとなります。テーマ〈3〉の地の大小も、見た目通りの大きさです。白2の受けには黒3とはい込んで、まだまだ白を脅かすことができます。
【参考図】 黒1の開きは大場に見えますが、相手に強く響くところではありません。〈3〉のテーマの地の大小だけの問題です。白2とこすまれてしまうと、正解図とは立場が逆転。△2子が安定するのに比べ、▲2子は不安定な石になります。
三つのテーマの順番は、その局面で正しく打つ地点を指南してくれる考え方といえます。
●メモ● 山本五段は15年前、大阪府枚方市から広島市内に引っ越した。同市在住の地方棋士、山田太喜三八段(故人)の「だれか地元で普及の手伝いをしてくれる棋士はいないでしょうか」との呼びかけに応じた。いまはすっかり広島の地元っ子に。対局の際は大阪に出向く。