上達の指南
(4)急場の好点 逃さないよう
(寄稿連載 2016/05/24読売新聞掲載) 最後は基本をもう一度確認しましょう。布石は戦いが少なく広い局面であることから、次の着点に迷うことも多いと思いますが、基本の考え方を参考にしていただければ好点を見つけやすくなるはずです。
【テーマ図】 黒番です。盤面全体を見渡して次の一手を考えましょう。〈1〉自分の弱い石〈2〉相手の弱い石〈3〉地の大小――の順番です。
【正解図】 黒1の詰めが三つの要素をすべて含んだ盤上この一手の急所でした。
まず▲3子に注目して下さい。盤上で一番頼りない石と言えます。次に△3子もかなり不安定な石です。そして地の大小です。黒1によって左上の黒地は大きくなり、逆に白地は押し込められ減少しています。
白2のコスミツケと黒3を交換して白4と下辺の大場に回れば、黒5の押さえが力強い。次の展開にもつながっていきます。
【参考図】 黒1は見た目大きい。しかし地の大小だけの問題です。急場より大場に打ったことになります。
逆に白2と開かれると攻守逆転です。正解図が三つの要素すべてを満たし、十分なかたちとなったことを考えると、自分の好点の周辺が相手にとっても好点ということなのでしょう。つまり〈1〉自分の弱い石――から考え始めるのが順番なのです。
基本を押さえ、急場の好点を逃さないようにしましょう。上達への階段を一歩ずつ上がって下さい。(おわり)
●メモ● 山本五段は「高尾紳路九段の厚みの碁が好き。あこがれの棋士は加藤正夫先生です」と語る。「手合は全力投球で」が信条。普及は故郷の鳥取や広島など中国地方を中心に活動しているが、「囲碁の裾野を広げるため、地方の重要性をもっと主張していきたい」という。