上達の指南

山本賢太郎五段の「基本の1、2、3」

(3)大きなスケールを目指す

(寄稿連載 2016/05/17読売新聞掲載)

 今回は少し難度が上がります。テーマを確認しましょう。〈1〉自分の弱い石〈2〉相手の弱い石〈3〉地の大小――です。

 【テーマ図】 黒番です。これまでは三つのテーマがすべて入っている形でしたが、今回はそうとも限りません。図をよく見て、テーマに沿った次の一手を考えてみましょう。

 【正解図】 黒1の飛びが正しい感覚です。この手には相手を攻める要素は入っていませんが、この局面で下辺の▲は白に目をつけられるとやっかいな存在となります。つまりテーマ〈1〉自分の弱い石――に該当するのです。
 白2の詰めもかなりの好点ですが、黒3のカケから9のツギまでとなると、下辺の黒は立派なスケールとなります。つまりテーマ〈3〉地の大小――も満たしているのです。

 【参考図1】 それでは黒1の詰めから行くのはどうでしょう。捨てがたい手ではあります。しかし左上の白にはなかなか手出しできません。白2の打ち込みに先着されると、6までの飛び合いは、左辺の形が決まっているため、黒に楽しみのない碁形となってしまいます。
 テーマから考えると、黒1は〈3〉地の大小――の選択です。白2は〈2〉相手の弱い石〈3〉地の大小――に沿っており、白の方がテーマをより踏まえた結果となります。

 【参考図2】 黒1の飛びに対し、白2と下辺の盛り上がりをけん制すれば、黒3で十分です。

●メモ● 山本五段の昨年の成績は8勝11敗。「前半はまずまず好調で、年間でも勝ち越したかったのですが――」。今年は4月まで5勝3敗。師匠の後藤俊午九段にはいまでもかわいがってもらっている。「色々な意味で魅力的な先生です。見習おうにも私にはできない魅力です」

【テーマ図】
【正解図】
【参考図1】
【参考図2】