上達の指南
(1)「広い方から…」でも失敗
(寄稿連載 2006/09/04読売新聞掲載) プロアマ問わず、空き隅を占めるときには小目や星がポピュラーです。星はスピード感がありますし、小目に比べればわかりやすい定石が多い。みなさんのなかにも、星打ちが好きな人も多いのではないかと思います。
ただし、星にも弱点があります。それは隅が甘くて、相手から三々を狙われてしまうこと。星を使いこなすためにも、相手から隅に入られたときにどう対応するかを知っておきたいものですね。
【テーマ図】 右上、▲の挟みに白1と三々に入られた場面です。あなたが黒なら、AとBのどちらから押さえますか?一見どちらもありそうですが。
【正解図】 この場合は黒1(テーマ図A)が正しい方向です。白2から8まではみなさんもよくご存じの基本定石。黒に手番が回って、9の開きが次なる大場。右辺を大事にして、黒も打てる進行。互いに相場の分かれですね。
【失敗図】 では、黒1(テーマ図B)からの押さえはどうでしょう?「広い方から押さえよ」との格言もありますから、この図にひかれる人もいるかもしれません。黒5までも、やはり基本定石。上辺方向に厚みを広げて、黒模様が大きくなった。黒の注文どおり――。
いえいえ、この場合は黒が失敗なんです。よく見てください。白6の肩突きがピッタリですね。白10まで楽々と模様を消されて、せっかく築いた右上の厚みが十分に働きません。黒に不満の残る進行でしょう。
【参考図】 もし、図のように上辺の黒石の配置が高いのであれば、今度は黒1の押さえが良くなります。上辺は良い構えとなり、白からうまく消す手がありませんからね。
▲にあるか、aにあるか。その一路の差で定石選択は変わってきます。
●メモ● 矢代女流本因坊は7月、囲碁棋士の金沢秀男七段と結婚したばかり。5年ほどの長い交際期間を経てゴールイン。「同じ職業ですから、話題も合いますし、碁のことも聞ける。棋士同士で良かったな、と思います」