上達の指南
(2)当たり当たりやはりヘボ
(寄稿連載 2012/09/04読売新聞掲載) 手筋とは何でしょうか。私の定義では、「利き筋を手順よく利用し、相手の石を筋場に持ってきて、自分の石の働きをよくする打ち方。また、自分の石が筋場に行かない打ち方」です。復習を兼ねて、もう一度、筋場の基本形を見ていきましょう。
【1図】 左上、左下ともにAが黒の筋場、Bが白の筋場です。そしてCが黒の筋場が重なった「ダブル筋場」という悪形の見本です。アキ三角になっていますね。
【2図】 白1、3とつけ切ったとしましょう。この形は黒も白もヘタな打ち方をすると悪形になります。
【3図】 正しい打ち方は「切り違い一方を伸びよ」の格言どおり、黒1と伸び、白も2の伸び以下4までです。「かざぐるま」と呼ばれる形です。
【4図】 ところが、黒1、3と当ててしまう人が少なくありません。これでは「当たり当たりのヘボ碁かな」です。黒1、3が筋場に来ています。
【5図】 これは△の石が筋場に来ていて、基本的に黒好形と見えます。
ところが黒1、白2の交換をした瞬間、黒1が筋場に来て白黒同形となり、互角になります。黒1は打たずもがなの筋のよくない手だったのです。
【6図】 このような場合は、黒1、3以下7と打つのがよく、Aの点がアキ三角、すなわちダブル筋場を生じさせ、白の悪い形になります。
●メモ● 依田九段といえば和服姿がトレードマークであったが、最近は見かけなくなった。体重が気になりだして、毎日5キロ近いウオーキングに加え、食生活改善に努め、10キロほどの減量に成功。そのお陰で洋服が着やすくなり、スーツで対局したところ2連勝。以来、洋服での対局を続けているという。