上達の指南
(3)石を働かせる素直な手
(寄稿連載 2012/09/11読売新聞掲載) 「筋がよい」「筋が悪い手」などと言いますが、筋場理論だと分かりやすく説明できます。
【1図】 このような配石があったとして、黒はどう打つのがよいでしょうか。
【2図】 黒1とたたいて白2とつがせ、黒3とつぐ人が多いでしょう。しかし、白4に伸びられると、同じ手数ながら黒にはAの断点があって白の方がよいことが分かります。
この分かれは、黒1の1子が△と白2の筋場に来ているため形がよくないのです。
【3図】 単に黒1とはねるのが筋のよい手で、白2のツギに黒3とつげば、黒5の伸びまでとなります。
【4図】 前図の黒5の伸びは素直な手で、これを黒1にはねるのは、白2の切りで黒3とつがされます。黒3のツギによってAのダブル筋場が出来て、黒石の働きが悪くなっています。
ダブル筋場を作らせたことによってプラスの働きをした白2の1子は、白4以下捨てても惜しくはありません。
【5図】 黒1と伸びたらどうしますか。ここでも単に白2のハネがよく、黒3に白4が双方最善の運びで、まったくの同形となり互角です。黒3でAに伸びるのは、白B、黒3となってCの点にアキ三角のダブル筋場が生じて、よくないのです。
【6図】 間違っても白1、3と当たり当たりを掛けて自ら筋場に石を持ってくるのは、今日限りやめるようにしてください。
●メモ● 依田九段は自宅から5分ほどの場所で、2年半前から「依田塾」を開講している。子供が中心の囲碁塾であるが、依田塾長自ら「日曜特訓コース」を担当し、約2時間もの講義を行っている。「筋場理論」も駆使して、子供たちに筋のよい碁を身に着けさせている。