上達の指南

依田紀基九段の「筋場講座」

(4)アキ三角を作らない感覚

(寄稿連載 2012/09/18読売新聞掲載)

 筋場理論の概略はお分かりいただけたかと思いますが、筋場は主として碁盤中央付近での話とご理解ください。辺や隅に近づいて行くと、スペースが狭く、理論どおりに行かないケースも出てきます。
 最終回にあたり、もう一度基本形で「筋場」について再確認しましょう。

 【1図】 このような形で、黒1に打つとAの点がアキ三角になり、白2はBとCにアキ三角が二つできます。黒3もDに、白4もAが同様にアキ三角になります。
 アキ三角は愚形の見本であり、これが出来る点がすなわち、筋場ということです。これを避ける感覚が大切です。

 【2図】 実戦的な形で筋場を見ていきます。置碁です。
 黒1の肩ツキから5と押さえ、黒7以下白14までの攻防が定石とされています。しかしこの後、黒Aと攻め合いを挑むと、白Bとのぞかれて難しくなります。

 【3図】 難しいことはせず、黒1、3と伸び、黒5と守るのが簡明です。5子並んだ白石にはAの筋場がたくさんできましたが、黒からAの筋場に打たないのがよいのです。
 「一間飛びに悪手なし」と格言にありますが、黒5までの一間飛びは筋場に強い性質があります。

 【4図】 これが▲の二間飛びだと、白1、3のツケ切りが生じます。黒4に白5と当て返されると、黒6と抜いた石がちょうど白の筋場に打たされたことになります。
 もちろん、白も5で6につぐのは自ら筋場に打つ手で、これは最悪です。
 相手の石を筋場に打たせることが快感になると、棋力は向上するものです。
 筋場理論はまだ発展途上と言えます。もう少し時間をかけ、皆さんが使いやすいものにしていくつもりです。
(おわり)

●メモ● 依田九段の三男、天心ちゃんは今月13日で2歳になった。長男の太陽君が碁を始めたのは小1、次男の大空君は4歳のときで、この2人よりも早く始めさせたいと、石の取り方を教えたが、さすがにまだ難しいという。「言葉が通じるようになれば大丈夫」と、今から楽しみにしている。

【1図】
【2図】
【3図】
【4図】