上達の指南

横田茂昭九段の「私の苦心の手」

(1)悪い図をあえて選ぶ

(寄稿連載 2005/01/17読売新聞掲載)

◆第50回NHK杯戦 白・小林光一碁聖 黒・横田茂昭九段

 昨年の成績は十七勝十四敗。満足はしていませんが、まずまずといったところでしょうか。ぼくは中盤まではうまく打っているのに、終盤に逆転されることが多い。あと二、三手になってから逆転負けした情けない経験もあります。いま、三十五歳、今年こそは弱点を是正して出直すつもりで対局に臨んでいます。

 今日から四回にわたり、「私の苦心の手」を紹介します。少しでも皆様の参考になればうれしいのですが……。

 【テーマ図】 白12の大ゲイマガカリに黒13と挟むのは、ぼくの好きな定石の一つです。
 小林先生は白14とひねってきました。これをイのツケなら普通ですが、黒ロとはね出して「打てる」と思っていました。以下、白14と定石通りに進んだとすると、白は下辺に偏っている感じがするからです。

 【変化図】 黒1とはねると、7までの進行が予想されます。これは黒の方向が少し悪い気がして不満でした。

 【実戦図】 黒1のハネは部分的には白2と打たれて悪いとされていますが、あえて選んでみました。白10までは穏やかな進行で、黒11と構えて、自分なりに打てた、と思っていました。評判もまずまずだったようです。しかし、あとはさらさらとやられて中押し負けでした。

 小林先生とは一勝三敗。相手のスピードを意識しないように心がけてはいるのですが、いつの間にか自分のペースを守れなくなってしまいます。それからあわててパンチを繰り出しても、軽くかわされてだめです。
 ぼくの碁は、総じて足が遅いんですね。

●メモ● 横田九段は1969年5月、岡山県生まれ。関西棋院所属。
80年に第1回全国少年少女名人戦・小学生の部で優勝、翌2回大会で準優勝してプロを目指し、83年入段、95年九段。

【テーマ図】
【変化図】
【実戦図】