上達の指南

横田茂昭九段の「私の苦心の手」

(3)右下隅の折衝で一本取る

(寄稿連載 2005/01/31読売新聞掲載)

◆第13期竜星戦 白・高尾紳路八段 黒・横田茂昭九段

 月に一、二回、関西棋院の研究会に参加しています。メンバーは結城聡九段、倉橋正行九段、中野泰宏九段、古谷裕七段、坂井秀至七段ら若手中心で、日本棋院の仲邑信也八段も顔を出しています。強い人と打ったり、研究したりするのは、とても勉強になります。
 高尾さんは二十八歳で、着々と実績を重ねつつあります。ぼくは二連敗していますが、次の機会には借りを返さなければいけません。

 【テーマ図】 白48までは互角の形勢でしょう。白は実利を稼いでいますが、黒は厚いから不満はありませんでした。黒49が急所のように見えて打ち過ぎです。ここは53あたりに控えるのが相場だったでしょうか。次に白50、黒51となって、これからの碁です。
 白52、54で、黒に打つ手がなく困りました。黒55を56のツギは白55と曲げられて、上辺の経営が難しくなりそうです。しかし、白56、58と黒一子を取られ、しかも黒59と後手を引かされたのでは苦しく、さっぱりでした。

 【実戦図】 黒1のアテを決めてから、3のツケが苦心の手です。白4は屈服させられた感じがあります。黒11までと実利を取り、しかもAの切り味が残って、一本取ったと思いました。

 【変化図】 黒のツケに対し、白1と押さえて抵抗するのは、黒2のハネ返しが手筋になります。白3に黒4、白5と決めてから、黒6と押さえます。白7の抜きに黒8とアテて、これは黒が食いついた形でしょう。
 しかし、【実戦図】の後はうまく打たれて中押し負けでした。

【テーマ図】
【実戦図】
【変化図】