上達の指南

横田茂昭九段の「私の苦心の手」

(4)大ゲイマで主導権を握る

(寄稿連載 2005/02/07読売新聞掲載)

◆第27期棋聖戦最終予選 白・横田茂昭九段 黒・小林覚九段

 小林覚九段とは二局打っていますが、まだ勝ったことがありません。これは十年ぶりぐらいの対局でした。近い将来には必ず、です。

 【テーマ図】 当時、黒9の大ゲイマが流行していました。白10の次に黒イのケイマなら、白ロの三々に入る予定でした。
 黒11、13のツケオサエには意表をつかれました。小林九段は考えているうちに、「(黒11、13で)白が困るのではないか」と思いついたとのことです。ぼくはここで悩み抜き、一時間ぐらい長考した記憶があります。

 【変化図】 常識的には白1のハサミですが、黒2のコスミツケに白3と開いた時、黒4と切られ、「白が打っていない」と判断しました。

 【実戦図】 ぼくが苦心の末、選んだのは白1の大ゲイマです。黒2の守りに、白3のツギは黒4の大ゲイマジマリが目に見えているだけに気がさすけど、白5の打ち込みから主導権を握れるとの読みでした。右下の黒は薄く、大ゲイマが中途半端な形になっています。
 黒6の切りには、白7、9と外回りで一子を捨てる要領です。白13のツケから21のカケツギまで、一応はさばき形でしょう。
 「自分なりにいい図を選べた。苦心のかいがあった」と思っていたのですが、最後の方まで良かった碁を逆転で三目半負けたのは残念です。
 中盤を過ぎてから自分のペースが乱れると、ガタガタと急に崩れてしまうのがぼくの悪いくせです。このくせを矯正しないと前進できません。(おわり)

 

【テーマ図】
【変化図】
【実戦図】