上達の指南
(2)利き筋はタイミング大事
(寄稿連載 2005/01/24読売新聞掲載)◆第60期本因坊戦予選 白・横田茂昭九段 黒・家田隆二八段
日本棋院に次いで、関西棋院も五十年余り続けてきた大手合を昨年で終了しました。段位の意味が薄れて権威が低下したこと、経費の問題など、原因は色々ありますが、これも時代の流れでしょう。新昇段制度は、タイトル獲得による昇段と勝ち星による昇段に大別されます。新聞碁などの棋戦と同様、大手合も勝たなくては意味がないのですから、棋士にとっては同じことではないでしょうか。
【テーマ図】 左下隅の定石は、白16と黒を突き破った形が好きで、ぼくの得意な布石です。黒39はイのトビが良かった。白42、黒43の利かしは今がチャンスです。後からでは間に合わなくなります。黒49、白50は決めない方が良かった。結果論ですが、悪手になりました。白52はここから手を付ける調子です。黒53は当然の反撃。黒61は時機尚早でしょう。黒63となったところで、白のサバキは?
【実戦図】 「いい手があるな」と思い、うれしさを噛(か)み殺しました。白1と黒の横っ腹につけたのです。黒2の押さえに、白3のハネと黒4切りを交換してから5と切りを入れ、黒6に白7の当てを決め、9と伸びるのがスキのない好手順でした。黒10に白11の置きがとどめです。この後、黒Aに白Bと黒四子を取って必勝形になりました。
【失敗図】 白1の下がりから打つのは、あまり筋が良くありません。黒2に白3、5は黒6の切りで抵抗されます。白7以下、黒10ツギとなり、白が困ります。利き筋は最高のタイミングが訪れるまで温存しておくのが大切なのでした。