上達の指南

楊嘉源九段の「韓流の分析」

(1)共同研究で布石が進化

(寄稿連載 2006/08/07読売新聞掲載)

 碁界は10年ほど前から韓流ブーム。なにしろ強いから、その戦法は流行(はや)る。10代の棋士がわんさか出てきて、国際戦で活躍する。彼らは兄弟のように仲がよくて、常に共同研究して戦法を磨く。新しい変化などを皆で徹底的に調べつくすので、定石の進化も速い。このシリーズでは、そんな韓流布石、韓流定石を研究してみたい。

 【テーマ図】 黒1の星と、黒3、5、7のミニ中国流の組み合わせが韓流の布石。白8の割り打ちに対する黒の打ち方がいろいろあるところ。いずれにしろ、黒は下辺の構えを大事にして、大きく模様を広げたい。まず、黒9と上から詰めて、白10の二間開きに黒11と肩を突く変化から調べてみましょう。

 【1図】 白1の押しは、黒の待っているところ。黒2と戻って、白3から白に先に伸びさせる。ふつうは先に行った方がいいのだが、この場合は黒8のケイマで黒地が大きすぎる。それに対して、右辺の白の二間開きは狭い。黒の思惑通りの展開でしょう。

 【2図】 次に白1とはうのはどうか。これは黒2のぶつかりがピンとしていて、黒が好形になる。白3のケイマには、黒4の並びが形。白5の肩ツキには、黒6のハイ一本で、8のハザマがきつい。かといって、白5でAに構える本手は、黒Bのケイマが絶好となってしまう。

 【3図】 そこで依田紀基九段が打ち出したのが、白1のケイマ。白としてはこの手が最善で、いろいろな変化が研究された。当初は黒2とソイ、白9までで一段落とされたのです。

 【4図】 これに対して、その後、韓国で開発されたのが、黒2のツケコシでした。白は3から7まで、黒1子を取るしかないところ。黒8と下辺に芯を入れて、黒は一定の満足を得る分かれです。

●メモ● 楊九段は36歳、台湾出身。1982年来日、85年14歳で入段、2000年九段。棋聖、名人、本因坊の3大リーグすべてに入った経験がある。そろそろビッグタイトルを狙いたいところだ。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】