上達の指南

楊嘉源九段の「韓流の分析」

(2)過激な戦法、支える自信

(寄稿連載 2006/08/14読売新聞掲載)

 韓国の若い棋士たちの打ちぶりは時に過激だ。研究して自信を持っているから、迷いがない。日本では序盤から強引な手法に出るのは、あまり好まれない。味気ないし、ハメ手のような戦法は品がないと嫌う傾向があります。けれど、あちらの若者はどんどんやってくる。自分が一番研究して分かっている作戦なら、使わない手はないと思っている。とくに国際棋戦では、相手がまだ熟知していないことも考えられるので、いまのうちに大事な碁で一発入れておきたいと思うのも無理はないことかも知れません。

 【テーマ図】 割り打ちした白石に、いきなり黒1とぶつけてきたときには、初めて打たれた相手はさぞ驚いたことでしょう。そもそも白の割り打ちは、どちらかに二間ビラキの余地を残して、穏やかな打ち方です。それを許さない、というのが黒1のツケなのです。

 【1図】 白1と頭をハネるのは当然。黒は2と引き、4と曲げる。白5のカカリにかまわず、黒6とハネるのが黒の狙いで、右下方面を大事に打つ。白7の両ガカリには、黒8のコスミから12までひたすら受ける。右下で好形を得た代償に、こちらがつらい形になるのは仕方ない。このあと早い段階で、黒14のトビが大きい。これも一局だが、右下の一本勝負になるので、プロとしては怖い意味もある。だから、最近はあまり見なくなりました。

 【2図】 1図の黒6では、黒1のケイマに受ける方がよさそう。白2にカカって、これからの碁だ。白2ではAやBもある。また、黒からはCの打ち込みが狙いになる。

 【3図】 白1のノビは張りのない手で、黒2からグイグイ押されて困る。黒8のケイマで右下が大きい。黒の理想形だ。白3で4にハネるのは、黒3の切りが厳しく、黒が有利な戦いになるでしょう。

●メモ● 楊九段と同じ台湾出身で、日本で活躍している棋士は多い。林海峰名誉天元を筆頭に、王立誠九段、王銘エン九段などは先輩。張栩名人をはじめ潘善キ七段、黄翊祖七段など優秀な後輩もたくさんいる。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】