上達の指南

楊嘉源九段の 作戦の分岐点

(2)一気の攻めで主導権

(寄稿連載 2017/03/14読売新聞掲載)

 自分の模様に相手が入って来たときに、受けるべきか反撃するべきか、局面によって正しい道は違います。受けてばかりでは甘くなることもあるし、やり過ぎて失敗すればすぐ負けになります。判断力が問われるところです。

 【テーマ図】左辺から大きな黒模様ができています。△と深く入って来たところです。黒イとボウシして一気に攻めるか、黒ロと受けて地を稼ぎながら将来の攻めを狙うか、決断が求められる場面です。

 【1図】黒1のボウシが厳しい一手です。白Aなどと入っても展望がありませんから、白2の飛びから中央に出て行くでしょう。黒3と追いかけて自然に中央の黒模様がふくらめば理想的な展開です。黒15の肩突きからさらに攻めを続行するのも有力ですし、いったんは黒Aと守っておくのもあるでしょう。いずれにしろ、黒1から一気に攻勢に立つ好機でした。

 【2図】黒1と受けて守るのは消極的です。下辺はすそ空きですから単純に守るのでは価値が低い。白2の打ち込みが厳しくなります。黒3と根拠を奪って攻め始めても一歩遅れています。白4のケイマから6、8と中に出て、ゆっくりした碁形になります。形勢はまだまだですが、白のペースであることは間違いありません。

 【3図】白2の打ち込みに、黒3とつけて上を止めるのは、白4の伸びから左辺で治まられてしまいます。白10まで地を持って生きれば白が十分です。

●メモ● 夫人の知念かおり六段とは棋士仲間もうらやむおしどり夫婦で、ともに運動神経抜群。ボウリングが好きで、2人でよく勝負したという。足は知念六段の方がはやいくらいだというから、対等に遊べるいい関係だ。スポーツが明るい家庭の潤滑剤になっているに違いない。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】