上達の指南

楊嘉源九段の 作戦の分岐点

(4)石の強弱見極め 中盤左右

(寄稿連載 2017/03/28読売新聞掲載)

 自分の石と相手の石はどちらが強いのかという力関係の判断は、中盤の攻防を左右します。よく理解してから作戦を立てましょう。

 【テーマ図】△と打ち込んできました。▲2子との力関係はどうなっているのでしょうか。黒が強ければ厳しく戦いますし、白が強いのなら▲2子を引っ張り出して戦うのは不利になります。2対1ですから黒の方が強く見えますが、意外にそうでもないのです。

 【1図】1のコスミツケから攻めるのは危険です。白2の立ちから6とぼうしすれば、白石が上辺に向かって逃げることになります。白10まで上辺の黒模様ががらがらです。黒9の飛びまで力を溜めても、右下の白はびくともしません。
 △は強い石、▲の2子は弱い石だったのです。

 【2図】△は強い石ですから敬意を払いましょう。黒1、3のつけ押さえから形を決めるのが対抗策です。白6のツギには黒7と切って、2子は捨てる方針です。白8の当てから10とかけつげば、黒11の曲げから15まで黒模様を囲ってしまいます。地になる模様で、黒に不満のない形です。途中、白6で7と上をつぐのは、黒Aのケイマで渡りますから、白は甘くて耐えられないでしょう。
 △1子は強い石と判断して、弱い▲2子を捨て石に活用するのが正しい態度でした。中盤の作戦の分岐点では、石の強弱を見極めるのが肝心です。(おわり)

●メモ● 明快な解説で新聞や雑誌で引っ張りだこの楊九段だが、実は大勢の観客の前で話すのが苦手で、大盤解説ではあがってしまうという。ふだんの明るさからは想像し難いが、シャイだからなかなか慣れないのだろう。テレビカメラは平気だというから、解説は紙面や画面でお楽しみいただこう。

【テーマ図】
【1図】
【2図】