上達の指南

結城聡九段の「今年この一手」

(1)ハネ返し 派手な分かれ

(寄稿連載 2017/12/05読売新聞掲載)

 10月、井山棋聖が高尾紳路名人からタイトルを奪回し、七冠に復活しました。囲碁・将棋界を通じ、2度の七冠は初の快挙です。「すごい」としか言いようがありません。僕は井山棋聖に散々な目にあわされていますが、来年は対局できるところまで勝ち上がり、少しはましな勝負をお見せできるよう、全力を振り絞るつもりでおります。

 【局面図】黒のカケに白が出切ったのに対し、▲と激しく押さえ込んだところです。白の応手はイかロが考えられます。

 【参考図】ところで、局面図の▲は昨年12月、AI(人工知能)のMasterがネット対局で、中国の若手四段に白1と打ったのが最初とされています。これによって常識が覆され、「打てる」に変わっていたのです。白23まで、白も立派な形でしょう。

 【変化図】白1、3のハネツギなら、黒4のアテから6と飛び、白も7と飛びます。黒8のカケが手筋で、白15までとなりそうです。黒16と構えて、僕は「黒を持ってみてもいいかな」と思いますね。

 【実戦図】白1とこちらのトビを選び、黒2、4とはねつぎました。白5は仕方がありません。黒6とつけ、白7のハネに、黒8とハネ返しました。白11、黒12と1子ずつ抜き合い、派手な分かれになりました。

 僕を含めて、「白がやや打ちやすいのでは」との声が少し多かったようです。

●メモ● 結城九段は井山裕太棋聖との対戦では6勝18敗と大きく負け越している。ただし、NHK杯の決勝で2度勝利し、2013年の十段戦五番勝負を3勝2敗で制するなど、重要な対局での勝ち星が目立つ。「ほかに自慢できることはありません。もっと借りを返したいですね」と結城九段。

第41期棋聖戦七番勝負第5局
白 九段 河野臨
黒 棋聖 井山裕太

【局面図】
【参考図】
【変化図】
【実践図】