上達の指南
(4)「壁攻め」を狙い激闘に
(寄稿連載 2017/12/26読売新聞掲載)実力者同士の大一番です。これまで数々のタイトルを取ってきたこの2人は、若手の代表格とは年齢的にかなりの開きがありますが、「中堅」と呼ぶのは失礼でしょう。まだまだ、若手の前に立ちはだかってもらわねばなりません。そんな2人の激闘譜を紹介しましょう。
【局面図】序盤早々、▲と左下隅の三々に入りました。現在はAI(人工知能)が多用して日本のプロ棋士もならっていますが、関西棋院の畠中星信四段が打ち始めました。最初は勇気が必要だったと思います。
【変化図1】白1の押さえなら、黒2のハイから8までを先手で打ち、10と開きます。畠中四段は、このような形で、Aのノゾキから白への「壁攻め」を狙ったのです。黒10はBぐらいまで進め、Aを強調する打ち方も考えられるでしょう。
【実戦図】白1とこちらを押さえました。白3のケイマに黒4とつけ、白5と押さえると、勢い黒6から8と出ていきます。黒10ではAと切るのも当然、考えられます。
【変化図2】白2のノビには黒3、5とはねつぎます。白6とはずす手は、ごく最近、アルファ碁が指摘して、打たれるようになりました。
実戦図、黒10と切れば、白11のコスミから15のカケツギまではほぼ必然でしょう。黒16の下がりに、白17の切りから21のカケと進みました。僕は「黒満足」に見えます。
(おわり)
●メモ● 結城九段は4人の子だくさんである。長女(小学4年)、長男(小学3年)、次男(小学1年)、次女(3歳)で、上の3人は8~10級と碁を打ち、みな算数が得意という。「打てれば何かプラスになると思います。プロにするつもりはありません」と結城九段。
第42期棋聖戦Sリーグ
白 九段 張栩
黒 九段 山下敬吾