上達の指南

結城聡九段の「今年この一手」

(3)若手対局 面白い空中戦

(寄稿連載 2017/12/19読売新聞掲載)

 若手同士の一戦です。許四段は本局の後、棋聖戦のSリーグに昇格し、七段に駆け上がりました。11月に昇段した一力遼八段だけでなく、七段陣には両対局者のほかにも、余正麒、志田達哉らそうそうたる顔ぶれがそろっています。誰が最初に井山裕太棋聖の七冠の牙城を崩すのか、当分、目が離せません。

 【局面図】▲とはねたところです。白が続けて打つとすれば、イとはねるか、ロからハと切るかのどちらかです。

 【変化図1】右上に黒がある場合は、白1のハネが常識的とされています。黒2のハネから12の伸びまで、穏やかな進行です。次に白はAと下辺の大場に開くか、右上Bの三々から実利を稼ぐか、どちらかを選ぶことになりそうです。

 【変化図2】局面図、白ロからハの切りに対しては、黒1のアテから3の押さえが代表的な抵抗手段とされています。白4の曲がりから18のケイマまでは、ほぼ一本道の進行でしょう。白22の押しは、シチョウ関係が良くなった場合、Aの切りを狙っています。

 また、右辺の白は、Bとはい、黒Cに白Dとへこんで、一手寄せコウが残っています。最近では、黒11で14と押さえる強硬手段も研究されています。

 【実戦図】白3の切りに黒4と下がりました。白5の下がりから9と開き、黒10と厳しく挟みました。白15まで、面白い空中戦の始まりです。

●メモ● 結城九段の今年の成績は、11月末現在で17勝24敗。これまで打ち分けは一度だけあるが、負け越したのは初めて。「6月に1200勝を達成できましたが、それ以外はさっぱりの1年でした。相手は強くなっていますが、もっと頑張らねばいけません……」と結城九段。

第73期本因坊戦最終予選
白 七段 芝野虎丸
黒 四段 許 家元

【局面図】
【変化図】
【変化図2】

【実戦図】