岡目八目
(2)古書店との繋がりが財産
(寄稿連載 2018/10/24読売新聞掲載)囲碁の古書や史料の収集を志して約40年。この間に費やした総額は、正確に数えたわけではありませんが、1億円は下らないと思います。
かつて中山典之先生(七段=故人)に「南さんが囲碁史関係に注いだお金を考えれば楽に豪邸が建つね」という旨の言葉を頂戴したことがありますが、確かにそのとおりだと認めざるをえません。
昔も今も、全国各地の古書店を巡ったり、各地で開催される古書イベントに顔を出したりし続けています。今はインターネットで膨大な情報をえることができる時代ですが、私はそうしたことはしておらず、昔気質(かたぎ)の刑事ではありませんが「自分の足で勝負!」と思っています。
やっぱり大事なのは、人との繋(つな)がりだという信念を持つようになりました。具体的に言えば、懇意の店を持つことで、数十年にわたって古書店巡りを続けていると、店主が囲碁関係の古書をどこかで発見したりすると、私のために入手してくれていたりするようになるのです。
私は値引き交渉などしたことがなくて、すべて店の言い値で購入してきました。知人からは「あまりに人が良過ぎる。吹っかけられていることもあるんじゃないの」と言われるのですが、私は店を信頼していますし、仮にそういう店があったとしても、逆に「南さんだから」と安くしてくれる店もあるわけで、間違いなくプラスだと確信しています。
何より、私個人では限界があるので、親しくなった古書店の方々の協力は欠かせません。店との繋がりが、私の活動にとって最大の財産であるとも言えるのです。
(囲碁史研究家)