岡目八目
(4)江戸期の1万局写譜が夢
(寄稿連載 2018/11/07読売新聞掲載)最近、古碁の写譜に力を入れています。これまで収集した写本や、日本棋院が所蔵している写本が原本です。パソコンは扱うことができないので、すべて手書きで筆写したものをノートに貼り付けていき、総局数は3000に達しました。
私なりの筆写法も確立されまして、通常は黒1、白2、黒3と、棋譜並べをするように書き込んでいくのでしょうが、私の棋力だと膨大な時間がかかってしまいます。なので私はまず、一番左の列から黒だけ手順に関係なく217、95、139といった具合に書き込んでいき、それが終わったら一路右の2列目、3列目と移ります。黒がすべて終わったら、今度は白を書き込んでいき、この方法でスピードが格段に上がりました。
江戸時代の打碁の遺譜は約1万局あると言われているのですが、そのすべてを筆写するのが私の夢です。
話は変わりますが10月20日、大阪商業大学で「囲碁史探求への道」と題した講演をさせていただきました。これまでの古書・史料収集を通して得たことや学んだことをお話ししたのですが、私自身が自らの歩みを振り返ることができ、とても貴重な体験をさせていただいたと感謝しています。
約40年間、手当たりしだいに収集を続けてきましたが、最近は「これまでしてきたことを整理し、今後の囲碁界のためにもきちんとした形で残していかなければならない」という気持ちが芽生えてきました。
ただひたすらインプットし続けてきたものを、これからはアウトプットしていく――私の囲碁史探求の道も、変化の時期を迎えているようです。
(囲碁史研究家)(おわり)