岡目八目
(1)棋聖戦スペイン対局を歓迎
(寄稿連載 2013/11/12読売新聞掲載)◇みかみ・まさる
スペインの首都、マドリードの近郊にアルカラ・デ・エナーレス市はあります。スペインで最も古く大学が開かれた街のひとつで、歴史地区は世界遺産に登録されています。この静かな学園都市が今、ヨーロッパの囲碁ファンの注目を集めています。来年1月、第38期棋聖戦七番勝負第1局が開催されることになったのです。スペイン囲碁界を挙げて大歓迎します。
スペインでタイトル戦が行われるのは、1989年の第44期本因坊戦、武宮正樹本因坊と趙治勲十段の第1局以来25年ぶりのことです。この本因坊戦によって囲碁の認知度は高まり、一気にファンが増えました。今回の棋聖戦への注目度は本因坊戦とは比較にならないほど高く、さらに多くの人が囲碁を楽しむようになることを期待しています。
スペインでは囲碁は若者のゲームととらえられています。特に理数系の学生の間では「コンピューターが勝てないゲーム」として、ほぼ全員がその存在を知っています。
棋聖戦スペイン対局が実現したのは、プロの最高の対局を間近で見たい、という声が高まったのが契機でした。スペイン囲碁協会がスペイン政府にそうした希望を伝えたところ、教育・文化・スポーツ省と協会が一体となって、棋聖戦招致を要望することになったのです。これに日本の囲碁界が応えてくれました。
支倉常長派遣使節団がスペインに渡って400年を記念する日本スペイン交流400周年事業が展開されるタイミングでもあります。スペインのみならずヨーロッパ中の囲碁ファンが、棋聖戦の開幕を心待ちにしています。
(スペイン囲碁協会名誉会長)