岡目八目
(4)大学で本格的な囲碁授業
(寄稿連載 2013/12/03読売新聞掲載)スペインに渡って42年、囲碁普及を始めて37年。振り返ると「継続は力なり」という言葉に行き着きます。はじめの頃は、定例日を設け、入門や指導にあたったものの、誰も姿を見せず一人じっと待ち続けたこともありました。
ようやく囲碁が根付き、愛好者も増えた1982年、スペイン囲碁協会を設立しました。当初の会員は30人ほどながら、感慨深いものがありました。会長はスペイン人で、1~2年で交代します。現会長は建築家のマヌエル・フローレス氏。会長を中心に普及から各種大会運営まで、協会一丸となって行っていることは頼もしい限りです。88年、マドリードのビルの一室に「NAMBAN(南蛮)」を開設し、週3回、碁会を催すようになり普及が加速しました。
スペインで囲碁が若者に人気がある理由の一つに、理数系の大学で囲碁と出会う学生が多いことがあります。マドリード、バルセロナ、セビリアの3都市の工学部では、約20年前から選択科目で囲碁授業による単位取得が実施されています。囲碁の歴史、ルール、実戦などを学ぶ本格的な授業です。囲碁ファンになると、彼らは大会に参加して大いに囲碁を楽しみます。
ヨーロッパと日本の大会の大きな違いは、開催日程です。「ヨーロッパ碁コングレス」は約2週間にわたって開催されますし、スペイン独自の「夏合宿」は、マドリード近郊の村で、1週間の囲碁三昧です。
情報関連の仕事をするフアン・サンペドロ君は、この夏、コングレスに2週間、夏合宿に1週間、続けて夏休みを囲碁で楽しんでいました。
(スペイン囲碁協会名誉会長)