岡目八目
(2)17世紀の修道院が対局場に
(寄稿連載 2013/11/19読売新聞掲載)棋聖戦スペイン対局の開催地、アルカラ・デ・エナーレス市はマドリードから電車で30分ほどです。対局会場となるのは国営宿泊施設「パラドール」。歴史的な建造物を国が買い取ってリフォームし、歴史はそのままに宿泊部分を近代的なホテルにしたもので、スペイン全土に94の施設があります。歴史ある古い物を大切に残す国の政策が色濃く出ています。対局会場のパラドールは、17世紀、修道院として建てられました。スペインでは畳の調達は困難なことから、棋聖戦史上初の椅子対局となるそうです。
ヨーロッパでの囲碁普及は長く日本が担ってきました。最近は中国、韓国の棋士が多く訪れるようになり、日本は影が薄いのが実情でした。しかし井山裕太棋聖の活躍で、一躍、日本の囲碁に関心が集まるようになりました。うれしい「井山効果」です。
ヨーロッパでは全てのゲームで強い者が憧れの対象となります。サッカーでいえば、レアル・マドリードやFCバルセロナ。子どもたちはこうしたチームのファンで、熱狂ぶりを競っています。
棋聖戦の開催にあわせて、スペイン囲碁協会ではさまざまなイベントを計画しています。マドリードの囲碁クラブ「NAMBAN(南蛮)」を会場にした同行プロ棋士による指導碁会、パラドールでの前夜祭、大盤解説会などです。中でも力を入れているのは、対局と同時進行で行う「ヨーロッパ棋聖戦」です。約200人が参加します。ヨーロッパでは大きな囲碁イベントが行われると、各地からファンが集まってきます。日本の皆さんも参加してみませんか。
(スペイン囲碁協会名誉会長)