上達の指南

人工知能(AI)の碁「UEC杯」と「ワールド碁」から

(3)ツケとカタツキを多用

(寄稿連載 2017/04/18読売新聞掲載)

 AIの碁に特徴的なのは、序盤のツケとカタツキ。「AIはなるべく紛れを少なくして、勝とうとする傾向にあります。ツケもカタツキも形が決まりやすいので、好むのでしょうね」と解説の金秀俊八段。「DeepZenGo」(Zen)も例外ではない。
 そのZenは、3月21~23日に大阪市で開催された「ワールド碁チャンピオンシップ」で、中国のミ昱廷(いくてい)九段、韓国の朴廷桓(パクジョンファン)九段、日本の井山裕太棋聖というトップ棋士3人と対局した。芈九段との第1局、朴九段との第2局には敗北したものの、井山棋聖には勝利を収め、その実力を世界に示した。

 第1局=参考図1=で出たのが(イ)のカタツキ、第2局で出たのが、参考図2の1のツケだ。特にこのツケは「人間ではあまり考えそうにない手」と金八段はいう。
 「左下隅の星から大ゲイマに詰めるのが普通。そう打って不満はないはずです。朴九段も、黒6の手を白7のところに打って、黒ロ、白ハ、黒ニ、白ホ、黒ヘと押していくのがよかった。自然に下辺の模様が消えますから」
 実戦では朴九段は黒6とハサミツケて戦いを挑んだ。「こう打ちたくなるところではありますが」と金八段はいう。
 「朴さんとしては、Zenにどのくらいの力があるのか、試すつもりもあったのでしょう。ところが白7が好手だった」

 一段落した時点の盤面が参考図3である。「左下隅は荒らされましたが、上辺の黒模様を制限しつつ下辺を盛り上げた。左辺でも生きを確保している。ツケを分かりやすくとがめて、明らかにポイントを取りました」。この後、黒はAと打ち込むが、白は手厚くBと抜いて十分。

 「碁盤全体を見ていて、非常に大局観に優れている」と第2局のZenについて金八段は話す。「世界のトップを圧倒しているのだから、大したものです」。終盤乱れて、この碁を落としたZen。実は第1局も寄せの段階で乱れている。強さと課題、双方が見えた。
(田中聡)

●メモ● 朴廷桓九段は1993年1月生まれの24歳。ソウル市出身で、現在、韓国ナンバー1といわれる強豪だ。2015年の国手戦などの国内タイトルを獲得。国際棋戦でも11年の「世界囲碁選手権富士通杯」などを制している。「ワールド碁チャンピオンシップ」も3勝0敗で優勝した。

【参考図1】
【参考図2】
【参考図3】