上達の指南

人工知能(AI)の碁「UEC杯」と「ワールド碁」から

(5)絶芸 正確で深い読み

(寄稿連載 2017/05/02読売新聞掲載)

 UEC杯の優勝、準優勝プログラムがプロ棋士に挑むのが「電聖戦」。5回目の今回は、明らかに過去4回と様相が異なっていた。優勝の「絶芸」、準優勝の「DeepZenGo」が、ともに一力遼七段を互先で破ったのだ。昨年は3子だったから、この1年でどれだけAIの実力が上がったかがわかる。

 絶芸の碁を紹介しよう。黒番の絶芸が左辺に張った模様を一力七段が消した場面が「実戦の進行1」だ。「互角ですね」と解説の金秀俊八段はいう。ここで絶芸の手は▲。AIの碁はツケと肩ツキの多用が特徴だが、典型例である。

 「参考図のように進行して、白Aとでもかかれば常識的ですが、一力七段は(実戦の進行1の)白1とはさんで力戦を挑みました」。黒22まで進んだ後、一力七段は白23と豪快にかけ、さらなる力比べに突入する。
 「少し黒に分がある戦いだと思います。一力さんの仕掛けに、絶芸は的確に対応しています」

 戦いが一段落したのが、「実戦の進行2」の場面。白は右辺の黒数子を取って生きたが、中央で3子を抜かれた。「ここを抜かれては、あまりよくない」というのが、局後の一力七段の感想だ。続いて絶芸は黒1~11と右下隅を捨て、攻め取りの形を作りながら左辺を地にする方針をとった。
 「黒が白2のところに打てば、白イ、黒ロ、白ハ、黒ニ、白ホ、黒ヘのように進んで、隅は生き形。絶芸はそれをわかっていながら、石を取らせて締め付けた方が楽に勝てる、と見ている。読みが正確で、深い」

 一体、どこまで読んでいるのか。どの時点で、最後までの見通しが立っているのか。「それを考えると、恐ろしい実力」と金八段。UEC杯と電聖戦は今年で終了するが、囲碁・将棋チャンネルなどによってAIの碁の企画は続くという。その企画で人工知能は、どんな碁を打つのだろうか。(おわり)
(編集委員 田中聡)

●メモ● 一力遼七段は、宮城県出身の19歳。宋光復九段門下で、2010年に入段。14年に史上最年少で棋聖リーグ入りし、七段に昇段した。昨年は竜星戦で井山裕太棋聖を破って優勝、天元戦の挑戦者にもなった。“ポスト井山”の一番手、と目される実力派の若手だ。これまでの獲得タイトル数は5。

【実戦の進行1】
【参考図】
【実戦の進行2】