上達の指南

清成哲也九段の「石を囲うゲーム」

(5)広い視点を身につけて

(寄稿連載 2005/04/18読売新聞掲載)

 先日、70歳前のご婦人と約3年ぶりに対局しました。入門から、初段に近づいた後、碁から離れ、全く打つ機会もなかったとのことですが、打ち進むにつれて以前と変わらぬ打ち振りに戻られ、一度身につけたものの力かと感じました。

 【実戦譜1】 9級に上がられたばかりの方との実戦です。白5のボウシに黒6と頭を出し、黒8とはねて上々の立ち上がりです。黒10のツギも好手。黒12は白を囲む好点ですが、13と打ち、こちらの白を囲みにいくのも有力でした。白17の打ち込みに、黒18、20は、白21で「割かれ形」になり、失敗でした。割かれ形を作ってしまったら、一方を軽く見るのが良いのです。黒22を28なら、さらに良かったでしょう。

 【1図】 (頭を出し、白を二分する)
 割かれ形を作る前に黒1が満点で、白2、4なら、黒5とついで白一子を包み込む感じ。白2をAなら、黒Bです。  【実戦譜2】黒1は、連絡しながら地を作る好点。しかし、黒3、5は地を守る気持ちが強く出過ぎました。

 【2図】 (三々には、まず遮る)
 まずは黒1と白を遮ってみましょう。白3なら黒Aで、白は窮屈ですから2ですが、ここで黒3と地を囲いにいっても良いし、

 【3図】 (積極策)
 黒3から割っていくのも有力です。白6で左下の黒地はなくなりますが、黒7で下辺の白地を小さくします。

 実戦譜、黒7は「ハサミ」という手段で、以下は大変良く打たれていますが、特に黒17と29が好手でした。このような「石を囲む感覚」を身につけられたら、碁を伸び伸びと楽しんでいただけることと思います。(おわり)

 

【実戦譜1】
【1図】
【実戦譜2】
【2図】
【3図】