上達の指南
(2)様子見に反発した強手
(寄稿連載 2011/12/06読売新聞掲載) 今年の本因坊戦は山下本因坊に羽根九段が挑戦しました。山下さん3連勝の後、羽根さんが3連勝と逆襲して勝負はもつれましたが、最後は山下さんが振り切りました。
羽根さんが反撃を開始した第4局を取り上げます。
【局面図】 右辺、黒19までは定型の進行。次に白イは本手ですが、羽根さんは白20とのぞいて黒の対応をききました。羽根さんは別の棋戦でもこの手を打っているので、おそらく研究済みだと思います。
【参考図1】 黒1のつなぎなら白4まで。後に白Aの動き出しを見て、のぞいた一手が利かしになっています。
【参考図2】 黒1の押さえなら白4までが予想されます。この後、黒5と大場にまわりたいのですが、白6から10まで渡りが残っているのです。
【実戦図】 参考図を嫌って、黒21と一間に飛んで反発したのが、私の予想にはない山下さんならではの強手でした。
白22は気合の手抜きですが、黒23の引き出しから白30となったとき、黒31から37までが山下さんの読みです。
下辺星の好位置にあった石を生かして、白を根こそぎ攻めようという山下さん好みの骨太な進行になりました。
この後、中盤の戦いで黒に誤算があって白が有利な展開になりました。山下さんも後半追い上げたものの、結局、白半目勝ちになりました。
●メモ● 今年の棋聖リーグで、河野九段は3勝2敗だった。最終戦に勝ち、リーグ上位の羽根九段が負ければ挑戦者決定戦に進出することができた。しかし結果は両者とも敗れて、井山裕太名人が決定戦へ。「局後に羽根さんが負けたのを知ってショックでした。情けない」
第66期本因坊戦七番勝負第4局
白 九段 羽根直樹
黒 本因坊 山下敬吾