上達の指南
(5)一間飛びの好手から激戦
(寄稿連載 2011/12/27読売新聞掲載) 今期名人戦は井山名人に山下本因坊が挑戦しました。今、最も見たいタイトル戦の組み合わせでしょう。ご存じのとおり、山下さんが名人位を奪取し、史上7人目の名人本因坊となりました。山下先勝で迎えた第2局です。井山さんが勝ってタイに持ち込みましたが、ここでは山下さんの手を取り上げます。
【局面図】 左下で戦いが始まりました。黒21まで、ありそうであまり見かけない局面です。ここで白イの伸びなら黒ロ、白ハに黒ニとかわされそうで、これは平凡な進行。黒ニでは手を抜いてホもありそうです。
【実戦図】 白22の一間飛びが気付かない好手でした。黒は23とつけました。
【変化図1】 黒1の割り込みには白2が用意の対応策。白4にはAの出を防いで黒5ですが、白6と出て悪いわけがありません。
【変化図2】 黒23に対しては白1と戻りたい。黒2のツギに白3と大場に回ります。これは局面図の黒ニで▲に打たせたことになります。この交換は利かしです。私はこれで白十分と見ました。
しかし、実戦のように白24、26と割りついだのは驚きでした。黒27が好形で打ちにくいのですが、白28と切って攻め合いを目指したのは山下さんならではの強手です。井山さんも気合で負けるわけにはいきません。黒29と逃げだして激しい戦いが始まりました。
(おわり)
●メモ● 河野九段は6歳のころ、アマ高段者の父、良記さんから碁の手ほどきを受けた。その良記さんは3年前、定年退職を機に東京都西東京市の西武池袋線保谷駅前に碁会所「天空囲碁くらぶ」((電)042・425・6378)をオープンした。河野九段も時には顔を出すという。
第36期名人戦七番勝負第2局
白 本因坊 山下敬吾
黒 名人 井山裕太