上達の指南
(5)頭の中に碁盤を入れる
(寄稿連載 2011/10/18読売新聞掲載) 皆さんは頭の中で、どれだけ鮮明に盤上の石の配置を思い描くことができますか。
この作業を正確に行える人ほど碁が強いということになるわけで、手を読んでいるうちに、あるはずの石が消えてしまうようではまだまだということです。そしてこの「頭の中に碁盤を入れる」ための有力なトレーニング方法が四路盤なんです。今回もコウ絡みの問題です。
【第1問】 簡単な問題ではありますが――。
【正解図1】 初手は黒1しかなく、白2までは必然ですが、ここで黒はどうするか。黒Aは白Bとコウを取られ、打つ手がなくつぶれます。
【正解図2】 黒1と放り込むコウダテがありました。白2と換わってから黒3とコウを取り返せば、今度は白にコウダテがないので黒の勝ちです。
【第2問】 慎重な手段と手順が要求されます。
【失敗図】 黒1と当てたくなりますが、白2に黒3が絶対となり、白4とコウを取られて窮します。黒には打つ場所がないのでパスするよりなく、白6とコウをつがれてセキ。黒の1目負けです。
【正解図】 一歩控えた黒1が好手。白2の取りを待ってから黒3と出るのが好手順で、白4の時に黒5とコウを取り返します。白に打つ手がなく、黒勝ちとなりました。
<泉美からのひと言> 取ったり取られたりした今回の2問を「頭の中の碁盤」だけで解いた方は、立派な有段者。そうでなかった方も繰り返し思い描いてみることで、徐々に頭の中に碁盤が入ってくることでしょう。
●メモ● 張栩棋聖が修業時代に師匠の林海峰名誉天元から言われたことで、鮮明な記憶として残っているのが、「常に頭の中に碁盤を入れておきなさい。そうすればいつでもどこでも勉強ができる」というアドバイスだという。張栩少年はいつも詰碁の問題を頭の中に入れておき、解き続けたという。