上達の指南

加藤充志九段の「今年この一手」

(3)常識覆す打ち方 畏怖の念

(寄稿連載 2013/12/03読売新聞掲載)

 4月にソウルで打たれた一局。李九段がすごい打ち方を見せてくれました。
 あまりに常識からかけ離れた手に、それまでの囲碁観が崩されていくような感覚に襲われたものです。

 【局面図】 黒1のノゾキと白2のコスミを交換し、それから黒3、5とつけ切ったのです。こんな打ち方は見たことがありません。
 白6、8と当てつがれて、黒石が分断されては、いいはずがないというのが常識です。

 【参考図1】 黒1と白2の飛びを換わって、黒3と三々に入るなら常識的です。これなら、だれもが納得でしょう。

 【参考図2】 黒1、3のツケ伸びは考えられる形です。
 ここで白4とぶつかってくれば、黒はAと立つはずです。それを黒5と切って、白6の出を許したのが実戦です。想像もできない事件でした。

 【実戦図】 黒1と抱えて白1子を制しましたが、白2のツケで白も立派な形です。黒3の詰めと白4の抱えを換わって、李九段は平然としています。
 たしかに全局的には黒が悪いわけではないかもしれませんが、こんな打ち方は怖くてマネができません。さらに驚いたのは、この後さらさらと打って、あっさり勝っていることです。
 世界的に実績を積んだ大御所でも、まだこんな世界を開拓しようとしていることに畏怖の念さえ感じました。

●メモ● 加藤九段は対局と勉強の毎日である。以前はパチンコで気分転換していたこともあったが、すっかりやらなくなった。研究会が増えて、今は詰碁の研究会が楽しいという。プロにとって詰碁はパズルのようなもので、苦しむ作業ではない。ただし、解けないままだと気持ち悪くて仕方ないという。

第18回LG杯
白 六段 王昊洋(中国)
黒 九段 李昌鎬(韓国)

【局面図】
【参考図1】
【参考図2】
【実戦図】