上達の指南

加藤充志九段の「今年この一手」

(5)進化中の定石 最新の変化

(寄稿連載 2013/12/17読売新聞掲載)

 研究が盛んで、定石がどんどん進化していきます。固定した考え方はできなくなりました。新しくなるのが早くて、ついていくのが大変です。まだ決定版がない進化中の定石で、最新の変化が現れたので紹介します。

 【局面図】 白1とかけた場面です。瀬戸七段は、黒2とはねて隅に変化しました。白3と押さえ込んだのは当然でしょう。そこで黒4とぶつかったのが強烈でした。
 そんなごつい手があるのかと、目を疑いたくなりました。

 【参考図1】 △のカケには、黒1とこすむならふつうです。白2のコスミツケから4と下がって隅を確保することになります。この碁では、黒5と押すことになるでしょう。これで、黒に不満があるわけではありませんが、瀬戸七段は、さらに石を働かそうとして、実戦の工夫に挑んだのでした。

 【参考図2】 局面図の白3で、1と引いたのでは芸がありません。黒2とかけついで、△のカケが甘くなります。

 【実戦図】 ▲のブツカリに白1のコスミツケから3と渡りました。黒4のはね出しに、白5の切りが手筋です。黒6、8と抜いて、白7から9と抱えて一段落です。
 見事な振り替わりで感心するばかりです。どちらかと言えば黒を持ちたい気もします。
 それにしても研究がどこまで進んでいくのか、大変な時代になりました。

●メモ● 加藤九段は、メール碁を始めた。同時進行のネット碁ではなく、一手ずつメールで交換するやり方だ。一局に2、3か月かかる。アマチュア相手の指導碁だが、一手送るたびにコメントも添えて、終われば一局の解説も付ける。ボランティアというから立派なものだ。

第39期天元戦本戦
白 三段 余正麒
黒 七段 瀬戸大樹

【局面図】
【参考図1】
【参考図2】
【実戦図】